2019年 4月 の投稿一覧

春の空を描く

ブログ記事、春夏秋冬それぞれの空の色
で、それぞれの季節の空の色の特徴を書きましたが、ここでは順次、具体的な描き方を書いていきたいと思います。

 

今回は、春の空の色。

 

春の空は、ちょっと「紫かかっている」のが特徴だと私は思っています。
そうではない春の空も、もちろんありますが、「紫」をいれたほうが、
なんだか “春っぽく”なる感じがするのです。

これは、私が使用しているアクリルガッシュに限らず、パステル・色鉛筆・カラーインクなどでも同じだと思います。

 

〈使用する絵具(ターナーアクリルガッシュ)〉

春空絵具

写真左から、ホワイト・コバルトブルー(ヒュー)・ウルトラマリン・ミキシングバイオレット・藍鼠(あいねず/ジャパネスクカラー)

 

 

両面ジェッソを塗ったイラストボードに描きます。

 

※ジェッソを両面に塗る理由についてはこちらのブログ
イラストボードの「そり(反り)」を解消する方法」をご参照ください。

 

イラストボード

 

 

絵具をお皿にとり、色を作ります。

春空色2種類

ひとつ(右)は、ホワイト+コバルトブルー+ミキシングバイオレット
を混ぜ、紫がかった水色(ラベンダー色よりも少し青みが強い感じ)

もうひとつ(左)は、ホワイト+コバルトブルー+ウルトラマリン
で、紫(バイオレット)を入れない空色を作ります。

下の完成作品の場合、
紫がかった方を右上半分に 紫が入っていない方を左下半分に塗ります。

 

 

よく乾かしたら、ホワイトで雲を描き、藍鼠+ホワイトで雲の影部分を描きます。

 

 

 

完成作↓

春の空完成

 

途中の過程を撮影するのを忘れて完成させてしまいました…

 

 

 

空のイラストのインスタグラムを更新中です。

Mayumi Ishii (Lyricism art)  Instagram

 

 

 

こちらの記事もご参照ください。

春夏秋冬それぞれの空の色

イラストレーションで描いた春夏秋冬の空の色

空を描くために必要な絵具の色・8色

 

 

 

イラストボードの「そり(反り)」を解消する方法

私は主にイラストボード(ケントボード)かバロンケントを板に水張りして、にアクリルガッシュで作品を描いていますが、ケントボードを使用する際、どうしてもボードが、そってしまう(たわんでしまう)のが、悩みの種でした。

 

 

そこで、いろいろ調べたところ、「イラストボードの両面にあらかじめジェッソ(白色地塗り剤)を塗っておくと、反り(たわみ)を軽減できることが分かりました。

注)但し、キャンソンボード等、紙質を活かした作品、透明水彩、カラーインク等、ジェッソによってテイストの変わってしまうような場合は使えない方法なので、ご了承ください。

 

 

この例は、museのイラストレーションボード(KMKケント・両面・1mm厚)B4サイズを使用しています。
イラストレーションボード

 

ジェッソと平筆(または刷毛)
(ジェッソはリキテックスの製品を使用)

 

 

ジェッソをお皿に使用する分だけ入れて、水でときます(飲むヨーグルトくらいの感じ?の濃度に)

 

平筆(刷毛)で、片面をよこ→たて→よこ と、乾かないうちに、ささっと3回塗ります。
塗り方

その後、よく乾かします(裏が机にくっつかないよう注意しましょう)

 

片面塗って乾いた乾いた状態。 写真では分かりにくいですが、反ってます。
乾いた状態1

ヨコから見るとこんな感じです。
乾いた状態2

次に裏面を塗っていきます。

 

表面と同じ要領で。

 

よく乾いた状態がこちら。
両面塗布1

ヨコから見るとこんな感じです。
両面塗布2

ほとんど、反りが解消されました。

 

この作業を施すと、たしかに作品が完成した際のイラストボードの反りがかなり軽減されます。
(まったく無くなる…というわけではありませんが)

また、描いている最中、表面が濡れている間は反りますが、乾くと反りはほぼ解消されます。
(塗りの厚みや画材によっても変わってくると思いますが、アクリルガッシュのそれほど厚くない塗りの場合は、効果がありました。)

 

 

今回は1mm厚のボードを例にいたしましたが、2mm厚では、さらに効果を実感しました。

 

 

もしも、ボードの反り・たわみに悩まされていましたら、ぜひ一度、お試しください。

 

 

松永禎郎さんの絵本2(かさじぞう・しろふくろうのまんと)

雪景色の美しい絵本を2冊ご紹介します。

 

松谷みよ子さんの文、松永禎郎さんの絵による、昔話「かさじぞう」の絵本。


かさじぞう (ワンダー民話館)

もちろん、よく知られた「かさじぞう」のお話なのですが、おじいさん、おばあさんのあたたかな表情や、じんわりと心に染み込むような雪景色がすばらしくて、知っているお話のはずなのに、思わず泣けてきます。(おじぞうさんたちの顔もまた、かわいいのです)

 

 

松永禎郎さんの雪景色が見られる絵本では、ほかに「しろふくろうのまんと」があります。

しろふくろうのまんと (1980年) (日本のえほん)

友だちとけんかして、ひとりぼっちの、ちよは、はるにれの木で出会ったしろふくろうにマントをかりて姿を消し、友だちの気持ちをきいて、仲直りを決心しますが、姿を消せなくなったしろふくろうがおじさんにねらわれているのを知って、いそいでマントを返しに行きます。

 

雪景色のなかに立つはるにれの木の描写がとても美しいのです。

そして、「かさじぞう」と同じく雪があたたかく感じられます。

 

 

絵本の表紙だけでは、その絵の素晴らしさが十分伝わらないのが残念です。

ぜひ、絵本をお手に取って観ていただきたいです。

 

松永さんには、もっとたくさんの絵本を描いて欲しかったと、心から思います。

 

出来れば、雑誌「詩とメルヘン」に毎号掲載されていた、美しい作品の数々を画集にしていただけたらどんなに嬉しいだろうと思います。

本当に、忘れられて欲しくない画家のおひとりです。

 

「かさじぞう」(ワンダー民話館)松谷みよ子・文 松永禎郎・絵 世界文化社 2005年

「しろふくろうのまんと」高橋健・文 松永禎郎・絵 小峰書店 1980年

 

松永禎郎さんの絵本1(すみれ島・むらさき花だいこん)

 

 

 

 

松永禎郎さんの絵本1(すみれ島・むらさき花だいこん)

 

松永禎郎さんは、私の最も敬愛する画家のひとりです。

松永さんの絵は、雑誌 月刊「詩とメルヘン」では毎月掲載されていて、いつも「こんな絵が描けたら…」と尊敬と憧れを抱いていました。

心の中に染み込むような詩情が、松永さんの作品にはいつも宿っていました。

 

松永さんは絵本も多数手がけられていて、その中で、戦争をテーマにした作品が幾つかあります。

 

今回、ご紹介したいのは「すみれ島」(偕成社)と「むらさき花だいこん」(新日本出版社)

 

すみれ島 (新編・絵本平和のために)

戦時中、毎日のように特攻隊の飛行機が通っていく小学校の子どもたちが兵隊さんたちに贈った、すみれの花束。

いつしか、特攻隊の通った海の島にはいちめんのすみれが咲き、人びとはその島を「すみれ島」と呼ぶようになりました。

 

むらさき花だいこん

中国大陸で負傷した日本兵が、少女からもらった、むらさき色の花だいこんの花。その種を日本に持ち帰った彼は、種をまき、いつしか花だいこんは平和を願う花になりました。

 

 

いずれも、戦争をテーマとしていますが、「すみれの花」「花だいこんの花」を通して、戦争の哀しさや愚かさを静かに伝える絵本です。

そして、松永禎郎さんの静かで美しい、染み入るような絵が、もう、途中で涙なくしては読めません。(読み聞かせは要注意です)

 

本当は、もっともっと評価されて良い画家だと思います。

そして、もっとたくさんの方々に、松永さんの作品を見ていただきたいと願って止みません。

 

松永さんの絵本は、これからも幾つかご紹介したいと思っています。

 

 

「すみれ島」今西佑行・文 松永禎郎・絵 偕成社 1991年

「むらさき花だいこん」大門高子・文 松永禎郎・絵 新日本出版社 1990年

 

松永禎郎さんの絵本2(かさじぞう・しろふくろうのまんと)