森の絵本(長田弘・作 荒井良二・絵)講談社

は、元々好きな絵本でしたが、最近あらためて読み返して、今(2020年4月)こそ、心に響く絵本ではないかと感じました。


森の絵本 (講談社の創作絵本)

どこかで よぶ声がしました。

でも 見まわしても だれもいません。

どこまでも緑色の森、絵本ははじまります。

 

「きみの だいじなものを さがしにゆこう」

すがたの見えない声は言います。

 

「ほら、あの 水のかがやき」

「だいじなものは あの 水のかがやき」

「ほら、あの 花々のいろ」

「たいせつなものは あの たくさんの 花々のいろ」

その「声」は次々に、だいじなものを聞かせます。

子どもたちの笑い声、クッキーのすてきなにおい、子どものきみがとてもすきだった本…

 

森が息しているのは ゆたかな沈黙 です。

森が生きているのは ゆたかな時間 です。

 

夏がきて 秋がきて 冬がきて 春がきて

そして 百年が すぎて

きょうも しずかな 森のなか。

 

どこかで よぶ声がします。

―――だいじなものは 何ですか?

―――たいせつなものは 何ですか?

 

大切なものは何なのか?本当に大切なものは何だったのか?

ゆたかな森もしずかな時間も

私たちは忘れてしまっていたのかも知れません。

 

明確な物語ではなく、だからこそ、胸に染み込むような絵本です。

 

 

森の絵本 長田弘・作 荒井良二・絵 講談社 1999年