「かいじゅうたちのいるところ」モーリス・センダック さく
は今なお根強い人気を誇る絵本で、近年映画化もされています。
ある、ばん、主人公のマックスは、おおかみのぬいぐるみをきると、いたずらをはじめて、おおあばれ。
おかあさんに寝室にほおりこまれてしまいます。
すると、寝室に木がはえだして、あたりが森やのはらになり、波間からはこばれてきた、舟に乗ってマックスは航海にでます。
1しゅうかんすぎ、2しゅうかんすぎ、
ひとつき ふたつき ひがたって、
1ねんと 1にち こうかいすると、
かいじゅうたちのいるところ。
かいじゅうたちは、すごいこえでうおーっとほえて、すごいはをがちがちならして、すごいめだまをぎょろぎょろさせて、すごいつめをむきだした。
けれど、マックスは全く怖がらず、かいじゅうたちをどなりつけると、かいじゅうたちは、おそれいって、マックスをかいじゅうたちの王様にします。
マックスは、かいじゅうたちを思うままにして、いっしょに踊ったり、楽しく過ごすのですが、しばらくすると、きゅうにさびしくなって、
「やさしいだれかさん」
のもとにかえりたくなります。
引き留めるかいじゅうたちにさよならして、舟に乗り込み、また、1ねんと1にち航海すると、いつのまにやらじぶんのしんしつに戻っていて、ちゃんとへやには夕ご飯がおいてあり、まだ、ほかほかとあたたかあったのでした。
この絵本には、よく見ると、いくつか仕掛けのようなものがあることに気が付きます。
まず、最初の場面から、だんだん絵の部分が大きくなって、寝室がすっかり森や野原になると、余白がなくなること。
そして、背景の月が、だんだん満ちてきて、最後には、すっかり満月になっていること、です。
余白が無くなっていく事によって、マックスが、現実ではない世界に入り込んでいく感覚を読み手にも感じさせるという効果がありそうです。
背景の月については、いろいろ解釈がありそうですが、一晩の出来事なのに三日月から満月に変わる現象は、「月蝕」しかないので、その、特別な時間の特別な夢だということなのでしょうか。
この物語は、実は生きていくうえで、大切なことを教えてくれているのかも?
と思います。
恐ろしいと感じるものに出会ったとき、どう行動するのか?
自分の思うように、行動できるのか?
と。
そして、ちゃんと、主人公が、冒険に「行って」、安心できる場所に「帰ってこられる」結末が、この絵本の根強い人気の理由なのではないかと思います。
映画版はこちら
「かいじゅうたちのいるところ」モーリス・センダック さく じんぐうてるお やく 1975年 冨山房