2018年 11月 の投稿一覧

銅版画について

 

銅版画をやってみたいと思ったのは、もう10年以上前。

なのに、ようやく始めたのは、ごく最近。

なかなか始められなかったのは、

①教室のある場所が遠い(片道2時間近くかかる)

②何か道具とか大変そう

③未知の世界なので、ちょっと尻込み

そんなこんなで、グズグズしているうちに10年…

続きを読む

ふしぎなえ(安野光雅)

「なぜ絵本が好きなのか?」
と聞かれると、ちょっと困ってしまうのは、

絵が好きで、物語が好きなら、自ずと絵本は好きでしょう?

と思ってしまうからだと思います。

“絵本的”なものに憧れを抱いてしまうのは、絵を描く人間なら皆
多かれ少なかれあるのでは?と。

私が一番小さい時の記憶でよくおぼえているのは、

安野光雅さんの『ふしぎなえ』

ふしぎなえ (安野光雅の絵本)

今も当時の絵本がそのまま本棚にあります。

この本は、ある意味とてもアーティスティックな絵本で、独特の緻
密な絵柄で、いわゆるだまし絵の世界が全ぺージ文章無しで繰り広
げられていて、私はもう何度でも、飽きずに眺めていました。

どういう絵かというと、こびとたちがいる空間が床だと思ったら
天井になったり、いつのまにか、壁になったり…

とても不思議で、絶対あり得ない世界なのに、絵として全く破綻が
無く、本当に今でも見入ってしまいます。

当然、この絵本はいわゆる“読み聞かせ”に適した絵本とは言えな
いのですが、ひとりで絵本の世界に入り込むことができる優れた作
品だからこそ、現在も増刷され、書店に並び続けているのでしょう。

この絵本が、安野光雅さんの最初の絵本(当時40歳)だというの
が驚きです。

はじめての沖縄旅のこと

沖縄県の那覇市に“金城の石畳”という場所があります。
この場所は、私にとって非常に大切な場所であり、沖縄を訪れたら
必ず立ち寄る場所でもあります。(と言っても、沖縄へはまだ4度
しか行っていませんが)

金城の石畳道(那覇)

続きを読む

春夏秋冬 それぞれの空の色

それぞれの季節ならではの
空の色ってありますよね。

雲の形なんかは分かりやすい
見分け方ですが、実は雲ひとつない

「晴れた日の青空」

でも、その季節っぽい空の色
というのはあります。

まず、

「春の空」は、天頂近くに
なるほど、ほんのりと青紫色を
帯びていく感じです。
そして地面に近い方はすこし薄い青
真ん中あたりは、意外にしっかりと
した色です。

春の空

「夏の空」は、一番描きやすいかも
知れません。
上の方はセルリアンブルーと
コバルトブルーを半分ずつ混ぜたような
しっかりとした青色。
下にいくぼど、やや黄色みのある薄い青
(セルリアンに白を多めに混ぜる)

そして入道雲などを描けば夏の空って
感じになります。

夏の空

「秋の空」は、全部の季節の中で
一番薄い、「水色」です。
でも、ぼんやりしているのではなく、
清々しさ、みたいなものが感じられる
色。
雲は鱗雲や鰯雲、私は巻雲とかを
描くのが好きです。

秋の空

そして、

「冬の空」特によくはれた日の青空の
天頂近くの空色は、黒に近いと
私は感じます。
大気が澄んでいるので、宇宙の色が
見えるのかも?
などと考えたりします。

冬の空

でも、実際に描くときは、さすがに
黒は混ぜられませんので、
ウルトラマリンブルーと
コバルトブルーを混ぜたりします。

ここに書いたのは、季節の空の一例で、
実際、空の色は毎日、刻一刻と変化して
いますし、出来ればスマホから顔を上げて

今日の空の色

を観察してみると、
面白い発見があるかも知れません。

 

インスタグラムで空のイラストを公開しています。
Lyricism art(Mayumi Ishii) instagram

 

 

これまで描いた「空」の作品を中心とした作品展を開催いたします。

sorairo -sky colors- いしいまゆみ 作品展

2021.10/15(金)~10/19(火) 11:00~19:00 最終日17:00まで

大阪市西区北堀江 ART HOUSE 2Fギャラリー

詳しくはこちらをご覧ください

 

 

空をモチーフにしたオリジナル傘出来ました。

傘「晴空」
ひとつの傘で8種類の空模様が楽しめます。
くわしくはこちらをご覧ください。

 

 

関連記事

「春の空を描く」

「夏空と入道雲の描き方」

「イラストレーションで描いた春夏秋冬の空の色」

「空を描くために必要な絵具の色・8色」

「ちいさいおうち」バージニア・リー・バートン

「ちいさいおうち」は、私が小さい時に、最も印象に残ったお話で
す。

ちいさいおうち

「お話」と言ったのは、私が持っていた絵本は、この岩波書店の絵
本ではなく、ディズニーのアニメ版の絵本だったからです。

このお話がディズニーのアニメになっているというのを知る人も今
では少ないのでは?と思いますが、私も実際のアニメは観たことが
ありません。

でも、お話は原作の絵本とほぼ同じで、

のどかな田舎に建ったちいさいおうちが、最初は都会に憧れていた
んだけれど、だんだん周りが都会に変わっていって、ついにはビル
に埋もれるようになってしまったけれど、最後はおうちごと、かつ
ての田舎のような土地に移されてめでたしめでたし…

おうちが主人公というのが、ちょっとびっくりな設定ですが、顔の
ようになった「ちいさいおうち」が健気でかわいらしくて、ちいさ
いおうちの気持ちにとても共感できる、というか、

幼心に「都会よりのどかなところのほうがいいな~」とか、思って
いました。

今でも、ビルの隙間に建つ古い建物や、国道沿いの畑付き古民家を
見かけると、

「ちいさいおうちみたいだなぁ…」

と、思ってしまいます。

そして何より、絵本を読み終わった後、

「よかったなぁ」

と安心できる。

そんな絵本です。

 

童謡について

さくらさくら

誰でもきっと、身体に染み付いた音楽というものが、あるに違いな
い。と思います。

私の場合はそれが「童謡」なのですが、
その原因は、小さい頃、家にあったドーナツ版のレコードと、父の
ギターにあります。

続きを読む

抒情(リリシズム)とは?

「抒情」という言葉に、どんなイメージを持たれるでしょうか?

私は「抒情的」と世間一般で言われる絵画やイラスト、さらに音楽が幼い時からずっと好きだったように思います。

朧月夜

これは、小さい時に母が雑誌「詩とメルヘン」や「いちごえほん」を
購読し、童謡のレコードや父の弾くクラシックギターの童謡に親しんで
いたことが大きいと考えられます(こんな風に書くと、いいところで育
った人と思われそうですが、ずっと団地の子でした)が、

そもそも「抒情」って何だろう?
と、改めて調べてみると、

〈抒情〉
現実の生の喜怒哀楽が昇華した形で表出される高度に芸術的な感動の性質(ブリタニカ国際大百科事典小項目事典より要約)

う~ん。
分かったような、よく分からないような…

では、私自身の言葉で「抒情」とは?
と、考えてみると、

『懐かしいような、哀しいような、寂しいような気持ちとともに、美しい、
可愛い、満たされた気持ちにもなる感情、あるいは感傷』

と言えるのではないか、と。

この感覚は前出の雑誌「詩とメルヘン」に由来するのでは?と思います。
この雑誌の編集長だった、あの有名な「アンパンマン」の作者でもある
やなせたかし先生は、雑誌が創刊された1973年当時に、「このままでは
日本の抒情の灯が消えてしまう」と危機感を持たれ、抒情画と抒情詩の
担い手を育てるこの雑誌を創刊されました。

当時、創刊されたばかりのこの雑誌や、子ども向けに後から創刊された
「いちごえほん」を眺めては、幼い私は漠然と「大きくなったら、こんな
絵を描ける大人になりたいなぁ」と思っていたものです。

今、その願いは、半分叶って半分叶っていないといえますが…
(これについてはまた別に書こうと思います)

その抒情の灯は、今現在、本当に風前の灯なのではないかと私は心配で
なりません。

そして、今のうちに抒情、とりわけ自分自身が描いてきた、これからも描い
ていきたいと願っている『抒情画=Lyricism Art』について、じっくりと
再考し、どうすればその灯を明るく灯せるのか、今はそのことを考えています。

 

 

※上記のイラストレーション「朧月夜」をはじめとした、リリシズムアート(抒情画)の世界が3種類の空色の傘になり、発売されました。

朧月夜

 

詳しくはこちらをご覧ください。

 

里山の風景

里山の風景

私が最もよく描くのが、いわゆる“里山”の風景です。

赤とんぼ

「里山」は人が作り上げた自然と人が最も美しく共存している場所
として、写真家の今森光彦さんが有名にされた言葉でもあります。

私が育った場所も、年々減ってきているとはいえ、里山の風景が残
っており、少し足をのばして散歩に出れば、季節ごとの花や作物、
鳥などの自然が身近に感じられます。

20年くらい前までは、藁ぶき屋根の家もまだあったので、風景の中
によく描き入れていましたが、最近はほとんど無くなってしまい、
さすがに描くことは少なくなってしまいました。

と、いうのも、私は自分の描く景色が「過去の風景」となるのには
抵抗があって、あくまで「今」であってほしいという願望が心の中
にあるからです。

懐かしい = 過去 ではない

懐かしいと思う気持ちは、あくまで「今」の自分のもので、
その気持ちを引き出す作品を描きたいと、私は思っています。

時間ごと、季節ごとに移ろいゆく里山の風景は、横に長い作品に絶
好の主題でもあります。

私は過去、何度か横に繋がっている手作り絵本やカレンダーを作り
ました。

大体、
いつも描きながら、風景を考えていくのですが、その都度違う景色
になるので、とても面白いです。

ちなみに、私の描く山は低くなだらかな山が多いですが、これは自
分の育った場所の山が反映されるらしいです。

信州に行ったとき、圧倒的にダイナミックな山々と、広い空に圧倒
されました。

そういう、日本全国の里山の風景を描きたいです。