絵本「よあけ」

「よあけ」ユリー・シュルヴィッツ作・画 瀬田貞二 訳

は、とても静かで美しい絵本です。

よあけ (世界傑作絵本シリーズ)

おともなく、

しずまりかえって、

さむく しめっている。

みずうみの きのしたに

おじいさんとまごが もうふでねている。

 

そして、しずかにしずかに、よがあけていくのを、

読者は絵本で体感するのです。

 

キャンプが苦手な私でも、ちょっと

この、みずうみで、

よがあけるのを体験したいと思わせてくれます。

 

かえるのとびこむおと。 ひとつ、またひとつ。

とりがなく。どこかでなきかわす。

おじいさんが まごをおこす。

みずをくんで

すこし ひをたく。

もうふをまいて

ボートを おしだす。

みずうみに こぎだす。

 

この絵本は「よあけ」が主役で、

「よあけ」を体感する読者が主役で、

一般的な絵本のプロセスとは違っている気がするけれど、

多くの絵本作家が、好きな絵本、理想の絵本として挙げています。

 

作者のユリー・シュルヴィッツは1935年ポーランド生まれ。

「よあけ」のモチーフは、唐の詩人柳宗元の詩『漁翁』によるそうです。

 

「漁翁」柳宗元

漁翁 夜 西巖に傍いて宿し

暁に淸湘に汲みて 楚竹を然く

煙銷え日出でて 人を見ず

欸乃一聲 山水綠なり

天際を迴看して 中流を下れば

巖上無心に 雲相逐う

 

〈意解〉

年老いた漁師が、夜になると、西岸の大きな岩に舟を寄せて停泊した。

明け方に彼は清らかな湘江に水をくみ、楚の竹を燃やして朝食を作る。

やがてもやが晴れ太陽が昇ると、もはや漁翁の姿は見あたらない。

舟をこぐかけ声がひと声高くひびいて、山も水もあたりはすべて

緑一色に染まっている。

空の果てを遠くふり返りつつ、川の中ほどを下って行くと、

雲が大岩の上空に、無心に追いかけあっているように流れていた。

(公益社団法人 関西吟詩文化協会HP より引用)

 

絵本は、この詩のとおりに展開していきます。

詩とちがっているのは、「まご」が一緒にいるというところですが、

これは、絵本を読む子供たちに親しみを感じさせる工夫かと思います。

 

ちなみに、この絵本は、通常の印刷で使用される4色(シアン・マゼンダ・イエロー・ブラック)ではなく、この絵本のためのインクを使用した、『特色刷り』だそうです。

最後ページの夜明けの瞬間の絵は、本当に色が美しいです。

 

絵本をつくる人は、

「こんな絵本をつくりたい」

と、夢見るような絵本です。

 

 

「よあけ」ユリー・シュルヴィッツ作・画 瀬田貞二 訳 福音館書店  1977年

 

 

 

 

 

 

 

 

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