おおきな ものの すきな おうさま(安野光雅)

おおきな ものの すきな おうさまは、何でも かんでも 大きなもので

生活をしていらっしゃいます。

おおきなもののすきなおうさま (講談社の創作絵本)

屋根よりもたかいベッドで目覚め、

プールのような せんめんきで かおを洗い、

庭のような広いタオルで顔をふき…

 

百年かかっても食べきれないほど おおきなチョコレートを

毎日お食べになった、おうさまは、案の定、虫歯になり、

おおきな おおきなくぎぬきで、やっとのことで歯を抜きます。

 

もう、とっても不便そうです。

そして、国じゅうの人たちを振り回しているおうさまです。

おバカで かわいらしい おうさまですが、きっと国は平和なのでしょう。

(おおきな おおきな チョコレートは かなり魅力的です)

 

そんなおうさまが、おおきな おおきな植木鉢を作らせました。

 

そのうえきばちに、たった一輪、咲いたちゅーりっぷは…

 

そのちゅーりっぷを見て驚く、おうさまと、

おおきなうえきばちの まんなかに咲くちゅーりっぷが、

とてもなぜだかとてもかわいくて、

私は好きな結末です。

 

安野光雅さんの、やはり緻密な絵が、

「大きなものって大変」

という、説得力があり、安野さんがあとがきで、書かれている、

エジプトの王は、ピラミッドという巨大な墓をつくらせたが、大きな花を咲かせることだけはできなかった。

生命を人間がつくることはできない。

花一つ、虫一つが、かけがえのないものであることを思わねばならぬ。

 

という言葉にとても共感します。

人間の、愚かだけれど可愛らしい感じを描きたかったということが、

伝わってくる絵本です。

 

 

「おおきな ものの すきな おうさま」安野光雅 作・絵 講談社 1976年

 

安野光雅さんの他の作品

「ふしぎなえ」